初年度に透過光測定方式の装置を大脳皮質からの膜電位螢光測光用に改造する方針で開発した測定システムを用いて、実際にラットの大脳皮質から光学的測定を行った。その結果、解析したい部分にフォトダイオードを設置し、焦点を合わせるのが非常に難しいことが判明した。そこで、ラットを脳定位固定装置に固定したまま、10μmの精度で脳定位固定装置ごと位置制御することが出来る光学ステージを作製した。また、背景光強度が小さいので、システムの能力を最大に活用できるレベルまで光学シグナルを増幅するアンプを作製し、測定システムに組み込んだ。また、励起光は透過できず螢光のみを透過する、螢光測光用の色ガラスフィルターは写真撮影用レンズ内に設置することにした。測定結果から、ノイズ成分が大きく、1回の掃引では膜電位に依存した光学シグナルが認識出来ず、加算処理が必要なことが判明した。そこで、当面は緑色発光ダイオードだけによる緑色励起と赤色発光ダイオードだけによる赤色励起を交互に行い、加減算処理する方式で用いることにした。この方式の方が、時間分解能が大きく取れる上、二波長のデータ間のクロストークも大幅に小さく出来るので、加算処理が必要な限り、より有効なサンプリングシステムと考えられる。ラットの足蹠を電気刺激し、膜電位感受性色素RH-414で染色した対側の大脳皮質感覚野から光学シグナルを測定した結果、限局した領域から脱分極性の応答が記録できた。この光学シグナルのピークの時間は、光学的測定後に最も応答の大きく記録された部位付近に双極電極を置いてフィールドで記録したデータでは、電流密度が最も高くなる位置に一致しており、本装置を用いて足蹠の電気刺激に対する大脳皮質感覚野における応答が光学的に記録出来たと考えられる。
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