1.エンケファリンプロモーター組み込みGFPベクターの作成 マウスC57/BLACK6ゲノムDNAをテンプレートとし、PCRによりプロモータ領域を増幅し、塩基配列を確認した。この方法で、エンケファリン遺伝子のエクソン1から上流におよそ2700bpまでのプロモータ領域が得られた。当初は、このPCR産物をGFP発現ベクターに組み込むことを考えた。しかし、これでは、GFPを発現させるために、フオルスコリンなどの刺激が必要と考えられた。さらに、この方法では、生理的な状態ではエンケファリンを発現していない神経細胞にもGFPが発現してしまう可能性が高いと考えられ、本研究の目的を達することが出来ない。 エンケファリンのcoding配列はエクソン3に含まれており、さらに、イントロンAおよびイントロンBに含まれる配列が、エンケファリンの発現を調節している可能性が示唆されている。そこで、新たに、エクソン3の3′-端からエクソン1の5′-端までをPCRで増幅した。現在、このPCR産物の塩基配列を検討中である。さらに、このPCR産物を前述のプロモータ配列とligationすることにより、全長およそ7.8kbpのコンストラクトを得る予定である。 2.中枢神経スライス標本への遺伝子導入法の検討 遺伝子銃による遺伝子導入の準備として、生後6-10日のラットおよびマウスの脊髄の厚さ約200〜400mmのスライス標本を作製し、約2週間まで培養が出来るようになった。 3.Enk含有ニューロンの電気生理学的、薬理学的性質の検討 我々が確立した単一細胞RT-PCR法によって同定したエンケファリン含有ニューロンからパッチクランプ記録を行い、その電気生理学的・薬理学的性質を検討する実験を合わせて行なった。エンケファリン含有ニューロンには、バルビツレートによって、強い過分極と活動電位の発生の抑制が見られた。
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