(1)プラークハイブリダイゼーションによるゲノムライブラリのスクリーニング PCRによりエンケファリン(Enk)遺伝子のプロモーター領域を含む全長約7.8kbpのコンストラクトを得ることを試みたが、非特異的増幅等の問題のため、目的とする配列を得られなかった。そこで、プラークハイブリダイゼーションにより、マウスゲノムライブラリー(mouse 129 Svj λ Genomic Library)からEnk遺伝子のスクリーニングを試みた。プローブには単一細胞RT-PCR産物であるEnk遺伝子の断片を標識して用い、化学発光により行った。制限酵素処理により、プロモーター領域を7kbまで含むもの、4.3kbまで含むもの、プロモーター領域からintron 1およびexon 2の途中までを含む6.4kbの配列を得た。 (2)Enkプロモーター・GFPプラスミドおよびEnkプロモーター・Ds Redプラスミドの作成 得られたコンストラクトを、GFPプラスミドおよびpTimer 1(イソギンチャク近縁種由来の蛍光蛋白質DsRedがコードされるプラスミド)の翻訳領域上流に挿入した。また、コントロールとしてサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター領域を挿入したGFPおよびpTimer 1プラスミドを作成した。 (3)遺伝子銃による遺伝子の導入と蛍光の観察 胎生または新生マウスの脊髄スライス標本に、遺伝子銃を用いて前述のプラスミドを導入した。1〜2晩培養した後、蛍光顕微鏡下に観察した。CMVプロモーター・プラスミドでは、脊髄スライス培養標本内の多くの細胞に蛍光が見られた。遺伝子銃の発射圧、遺伝子銃から標本までの距離、金粒子の直径等に関して、最も効率の良い条件を見出した。Enkプロモーター・プラスミドの導入により蛍光を発するニューロンが、脊髄スライス内に散在していた。これらは後角に多く分布していた。蛍光を発したニューロンの半数以上がENK mRNAを含有していることが単一細胞RT-PCR法により確認された。本方法がEnk含有ニューロンの同定に有用であると考えられた。今後さらに特異性等に改良を加えてゆきたい。
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