まず最初に、視床-頭頂連合野投射の部位局在を電気生理学的に検索した。前年度と同様に、麻酔下に、サルの下頭頂小葉を中心に、頭頂連合野の種々の領野の皮質表面と、表面より2.5〜3.0mmの皮質深部に、大脳皮質フィールド電位記録のための慢性記録電極を設置した。回復後、覚醒下でタングステン電極を視床及び、帯状回の各所に刺入し、微小電気刺激を行い、誘発された大脳皮質フィールド電位を解析した。視床刺激により、頭頂間溝周囲に表面陰性-深部陽性電位が引き起こされた。この電位を誘発する視床部位の中で、その前外側部刺激により頭頂間溝背側部に、後内側部刺激により頭頂間溝腹側部に本電位が引き起こされた。前年度の結果から、前者が後外側腹側核・後外側核に、また後者が視床枕核内側部に対応すると考えられた。電流滑走の影響を検討するため、刺激強度を下げた記録と比較したが、電位の分布はほとんど同じであった。次に、頭頂間溝周囲に視床刺激の場合と同様の電位を引き起こす帯状回の範囲を調べた。その結果、帯状回前部の刺激は無効であり、その後部刺激でのみ誘発されることが判明した。しかし、この電位は、視床ヘリドカインを注入しても、ブロックされなかった。従って、視床での中継を確認することはできなかった。今後は、帯状回刺激による誘発電位の視床における中継を、リドカイン注入部位を変えるなどして更に検討し、実験終了後、以下の形態学的検索を行う予定である。電気生理学的に同定された視床内に、頭頂連合野投射における局在の違いに従って複数のトレーサー(WGA-HRP、BDA、蛍光色素等)を注入し、頭頂連合野皮質における順行性標識終末と、帯状回皮質での逆行性標識細胞の分布を調べる。
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