マウス個体内にヒトのリンパ組織を構築する試みとして、NOD-SCIDマウスにヒト末梢血単核球を腹腔内に移植した。移植後2週から4週目のマウス脾臓の中心動脈周囲にヒトB細胞T細胞が定着した。T細胞はCD4陽性T細胞あるいはCD8陽性T細胞であった。さらにヒトマクロファージが散在した。このマウスにHIVを接種すると2から3週目に特に脾臓においてウイルスに感染していない細胞がアポトーシスに陥ることがTUNEL染色の結果わかった。そして、このTUNEL陽性細胞の半分以上には、FasLでなくTRAILを発現するT細胞が隣接していた。さらにTRAILに対する抗体を投与するとTUNEL陽性細胞が極端に減少した。この事実はNOD-SCIDマウス内に構築されるヒトリンパ球はHIVに感染するとTRAILが誘導され、周囲の感染していない細胞にアポトーシスを起こすことが証明された。本研究はHIVの増殖のもっとも活発な組識であるリンパ臓器をSCIDマウス内に構築したものである。その結果リンパ臓器におけるアポトーシスシグナル分子の同定に成功した。さらにヒト細胞の構築に関与するシグナル分子の解明もおこなった。ヒト単核球の移植時にケモカインに対する抗体を投与すると、ケモカインのシグナルを抑える抗体を投与したマウスにおいてはヒトリンパ球とマクロファージの移植構築が阻害され、ヒト細胞によるリンパ臓器様の組識構築が見られなかった。この事実はケモカインがリンパ臓器の組識構築に関与することをさらに明らかにした。
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