研究概要 |
高血圧は致死的血管病を引き起こす極めて危険な疾病のひとつである。この疾病は遺伝的素因がもととなり環境因子が作用し発症すると考えられているが、病因遺伝子は同定されていない。近交系ラットは血圧に連鎖する量的形質遺伝子座(Quantitative Trait Loci, QTL)の解析が進められている。しかしながら、ラット以上に数多くの近交系統が存在するマウスにおいて血圧QTLの解析は現在まで試みられていない。そこで申請者らは、マウス血圧形質の明確化とマウス血圧QTL解析のため、A)今年度は数種近交系マウスの血圧形質を検討した。その結果、B)のQTL解析を実施した。B)CBA/CaJおよびBALB/cJの2種系統間の子孫を作成し、マイクロサテライトを用いたGenome-wide scanにより、マウス血圧QTLを解析した。1)2系統間における血圧形質:ジャクソン研究所よりCBA/CaJおよびBALB/cJを導入し、収縮期血圧データを採取した。2系統間で平均収縮期血圧に大きな差は観察されなかった。しかし、予備実験よりF2世代の血圧標準偏差値に大きなばらつきが観察され、血圧の量的形質遺伝子座にエピスタシスが存在する可能性が考えられた。2)F2世代の作製と血圧形質採取:CBA/CaJ・BALB/cJのF1におけるインタークロスにて合計250匹の子孫を作製し血圧形質のデータを取った。3)遺伝子型の解析:子孫全体の15%を占める低い血圧形質を示す個体および15%の高い血圧形質を示す個体よりゲノムを抽出した。親系統間にて多型のあるマイクロサテライトを20cM間隔にてY染色体をのぞく全ての染色体にて決定した。各マイクロサテライトの遺伝子型を決定した。遺伝型と血圧形質をもとに統計学的なQTL解析を行った。結果、第15染色体のセントロメアより9.9cM上にあるD15Mit175に血圧と有意に連鎖する遺伝子座を明らかにした。
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