我々はまずC57BL/6J(B6)とA/J(A)との基礎収縮期血圧値差に注目し、両系統間の子孫を用いてゲノムワイドな血圧QTL解析を試みた。 QTL解析はトラディショナルな解析方法と我々が新規に発表した相互作用QTL解析方法とを用い行った。結果、Bpq1〜6まで合計6個の血圧QTLが同定された。第1染色体上に単独に作用する2つのBpq1(D1Mit33)とBpq2(D1Mit14)、第4染色体上に単独で作用するBpq3(D4Mit164)、第5染色体上に単独で作用するBpq4(D5Mit31)、第6染色体上にBp6と相互作用するBpq5(D6Mit15)、第15染色体上にBp5と相互作用するBpq6(D15Mit152)がマップされた。 興味深いことに今回明らかになった6個のマウス血圧QTLのうち5個がラット高血圧QTLとまた4つがヒト高血圧QTLと相同な領域にマップされた。このことはマウス血圧QTL解析がヒト高血圧責任遣伝子の解明のために有用であることを示す結果となった。 我々は次にCBA/CaJとBALB/cJ間のF2子孫を約200匹用い血圧、心拍、心重量と連鎖するQTLの解析を行った。両系統の収縮期血圧値の差は僅か8mmHgであり2SDunits以内であるため、通常はQTL解析には不十分な形質であると考えられた。しかし、この交配が他の解析の目的によって行われたこと、さらにF2子孫における血圧形質が広い分布を示したことより、我々はQTL解析が成功すると考え、マウス血圧、心拍および心重量QTLのゲノムワイドな解析を試みた。 結果、血圧と連鎖するQTLが2つ同定され、第15染色体上にBpq6(D15Mit175:バッククロスBで同定されたQTLと同等)、第7染色体上にBpq7(D7Mit31)がマップされた。また、我々は心拍と連鎖するQTL、第2染色体上のHrq1(D2Mit304)と第15染色体上のHrq2(D15Mit184)を同定した。さらに遺伝子・遺伝子相互作用するQTLとして第1染色体上にHqr3(D1Mit10、Hrq1と相互作用する)をあわせて同定した。心重量についても第14染色体上にHwq1(D14Mit167)を同定した。Bpq6およびBpq7はヒト高血圧QTLおよびラット高血圧QTLと相同な領域にマップされ、改めてマウス血圧QTL解析の重要性が明らかとなった。
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