研究概要 |
本研究の目的は、コローズドコロニー系から育種されたてんかんモデルラットNoda epileptic rat(NER)を起源系統にして、これまでの交配試験で推定された2つのてんかん感受性遺伝子座Ner1(第1染色体上)とNer3(第5染色体上)を標的とし、2種のコンジェニック系統F344.NER-Ner1^<NER>, Ner3^<NER>およびNER. F344-Ner1^<F344>, Ner3^<F344>を作出することである。前者はF344/Nを陰性対照系統とするてんかん発症型コンジェニック系統、後者はNERを陽性対照系統とするてんかん非発症型コンジェニック系統になることが期待される。本年度においては、前者についてN8代に達する個体が得られたこと、N5世代でインタークロスを実施して2遺伝子座をホモ化したことが主な成果である。しかしながら、ホモ化したF344.NER-Ner1^<NER>, Ner3^<NER>個体を6ヶ月間経過観察したところ、期待に反しいずれの個体においても強直間代発作が観察されなかった。この結果を説明する仮説のひとつとして、戻し交配実験で推測された2遺伝子座Ner1とNer3だけではてんかん発症に十分でなく、遺伝背景に存在する他の遺伝子(群)の作用が必要であるという考え方が挙げられる。今後F344.NER-Ner1^<NER>, Ner3^<NER>をNERと交配させて遺伝背景をヘテロ化することにより、有益な情報が得られる可能性がある。また、本年度においては、後者NER.F344-Ner1^<F344>, Ner3^<F344>についても、N5世代に達する個体が得られ、途中経過ではあるが、いずれも予想通り強直間代発作が観察されなかった。来年度中にN7世代に達すると予想され、てんかん非発症型コンジェニック系統が確立されることが期待される。
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