カエルのさまざまな細胞の初代細胞培養を試み、遺伝子導入ホスト細胞の開発のための基礎研究を行い、成体の心臓からの内皮細胞の初代培養法をほぼ確立した。心内皮細胞は牛胎児血清を10%含むダルベッコ変法培地にて培養が可能となった。約50回の分裂までは可能であることが判かり、遺伝子改変細胞の候補として、この細胞へ遺伝子導入・薬剤選別・相同組み換えなどを試みることが可能となった。主な実績は以下のとおりである。 1.心臓・肝臓・精巣・皮膚・筋などの中から、最もよく増殖し経代が容易にできる細胞種は心(内皮)細胞であることを明らかにした。また骨格筋の筋芽細胞も分化はするものの比較的よく増えることが判明した。 2.心内皮細胞は、22mmウェルに3x10^4個播いた場合に最も速いときで1週間に10倍増殖した。しかしサブカルチャー世代数が進むにつれ、緩やかな増殖へと変化した。このことからこの細胞は癌化していないと考えられた。また、400/ウェル以下の細胞密度で播いた時にはきわめて遅く増殖し、クローン培養へのさらなる工夫の必要性が示された。 3.心内皮細胞を凍結保存することを可能にした.解凍した細胞も良く増殖することが判明し、遺伝子導入実験のために同世代細胞の大量保存が可能となった。 4.トランスジェネシス法のためのホスト細胞の種類をふやするため、筋芽細胞を高血清下で維持することにより未分化な状態に保つ試みも行った。その結果、40%血清存在下で筋芽細胞分化がほとんど抑制されることが判明し、ホスト細胞としての可能性が確認できた。 5.遺伝子改変個体作成の前段階として細胞キメラの必要性もふまえ、核マーカーによる細胞追跡系のためのボレアリス(核マーカーをもつツメガエル)の細胞培養も試みた。核識別可能な異なる2種の筋芽細胞間のキメラ筋管を作成したところ、核マーカーによる追跡が可能であることが判明した。
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