Human T cell leukemia virus type I (HTLV-I)は、成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスである。この疾患の病態および治療等の研究のためには動物モデルの作出が必須である。本研究では、ATLモデルマウス作製を目的として、T細胞にHTLV-ITax遺伝子を発現するトランスジェニック(Tg)マウスの作出を試みた。 1.Tgマウス作出のための導入遺伝子の構築 HTLV-I Tax遺伝子を含むプラスミドよりTax遺伝子領域をPCRによって増幅させ、p56Lckプロモーター(末梢T細胞に発現するdistal、胸腺特異的発現のproximal)下流にTax遺伝子をつないだ導入遺伝子を構築した。 2.HTLV-I tax遺伝子導入トランスジェニック(Tg)マウスの作出 Tgマウスの遺伝的背景をC57BL/6マウスで作製したが、両Tgマウスともに不妊であった。そこでdistal-Taxについては遺伝的背景をBDF1(DBA/2 X C57BL/6)マウスに変更して作製しなおし、10匹のfounderを得た。また、proximal-Taxについては、体外授精により、founderを得た。 3.Tgマウスfounderの病態解析 Proximal-Taxマウス#15は、肝臓に腫瘍を認め、肺の一部にも同様の所見が見られた。#16マウスは、腎臓に慢性糸球体腎炎が、観察された。#11マウスに病変は認められなかった。Distal-Taxマウスでは、#7に肝臓、脾臓および肺に腫瘍が確認された。また、#6および7マウスともに腎臓に慢性糸球体腎炎様所見を認めた。 Taxは腫瘍を引き起こしたが、T細胞系の腫瘍ではなかった。また、各マウスに共通して腎病変が認められたが、トランスジーンの入つていない同日齢のマウスでは病変は全く認められなかった。現在、F1マウスについて解析を実施している。
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