平成12年度の研究実績に基づき、今年度はこれまでに開発した方法にて凍結融解したラット精巣上体精子をメス子宮角上部へ注入する試験を実施した。凍結用培地はLactose 8%(v/v)、Egg yolk 23%(v/v) Dibekacin 10mg/100mlをTris 10%溶液にてpH7.4に調節したものを基本培地とし、これに1)凍害保護物質を添加しない(無添加区)、2)Equex Stem(ES)を添加(ES区)、3)ESおよびglycerol(G)を添加(ES+G区)および4)Gのみを添加(G区)した4種類をもちいた。そして、凍結精液を融解し、偽妊娠を誘起したメスへ外科的に注入した。そして注入後の凍結融解精子由来の胚盤胞への発育を調べた。また、新鮮(Fresh)精子も同様に子宮内注入して胚回収を試みた。結果はFresh精子注入メスからの胚盤胞/回収胚数は76/95(80%)、凍結融解精子では無添加、ES、ES+GおよびG区でそれぞれ、2/44(4.6%)、31/47(66%)、2/17(11.8%)および0/20(0%)であった。このことより、Fresh精子と比較し凍結融解精子を注入してえられた胚盤胞率および胚回収数ともに有意に(P<0.01)低い値であったが、ES区は他の区と比較し高い(P<0.01)胚盤胞率であった。これらのことから、凍結用培地に添加するGが回収胚数および胚盤胞率を低下されるが、凍結用培地に添加するESはラット精巣上体精子に対する凍害保護効果があることが示唆された。
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