本研究は食虫目実験動物スンクスが保有する扁桃組織を抗原刺激することでIgA産生を伴う局所粘膜免疫応答を誘導し、IgA腎症などの扁桃性病巣感染症の病態モデルを確立することを目的として遂行された。平成12年度は主に形態学的および免疫組織化学的手法を用いてスンクス扁桃の免疫組織としての生状を検索し、同組織が粘膜免疫応答に重要なIgA成分の高い産生能を保有することが明らかにされた。また、スンクス消化管からIgA成分の分離抽出を試みたが、精製分画のタンパク濃度は低くドットプロット解析でも十分な反応は認められなかった。平成13年度はタンパク抗原の免疫により扁桃局所に誘導した特異抗体産生と遠隔臓器としての腎臓への影響について病理組織学的ならびに免疫組織化学的検索を行った。その結果、扁桃に抗体産生応答を認めた個体の腎臓において巣状に特異抗体陽性の穎粒状沈着を示す腎糸球体が認められた。メサンギウムの増殖や半月体形成などの病変像は認められなかった。酵素抗原法による免疫電顕的検索では、抗体陽性反応は肥厚した内皮基底膜下に瘤状の沈着やメサンギウム領域での顆粒状沈着に一致して観察された。しかしながら抗原抗体複合物の形成に関与する免疫グロブリン成分についてはIgAよりもむしろIgGへの反応性が高く検出される場合があり、扁桃局所での抗体産生と得られた腎糸球体病変形成機序との相関には未解明の点が残され、スンクスを用いたIgA腎症モデル確立について今後の検討課題が提示された。
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