色素性乾皮症G群モデルマウスであるXPG/2系統ノックアウトホモマウスは、その細胞が紫外線に高感受性であること、著しい成長不良を示し離乳期までに死亡すること、栄養摂取等に異常があることなどが明らかとなっているが、DNA修復以外で何が原因となり、このような症状が現れるのかが明らかとなっていない。大脳について組織学的解析を行ったところ、大脳海馬に存在するCA1領域の細胞が、特異的にアポトーシスを起こしていることが観察された。次に萎縮した細胞質および核をもつと観察されたXPG/2系統ノックアウトホモマウスの小脳について組織学的な解析を行った。その結果、プルキンエ層において、核濃縮を起こした細胞が多く観察された。Calbodin-D28(CaBP)に対する免疫組織学的解析を行ったところ、これらの萎縮した細胞はプルキンエ細胞であることが確認された。この結果から、XPG/2系統ノックアウトホモマウスのプルキンエ細胞の樹状突起は他のヘテロあるいは野生型のマウスに比べ、小さくまた短いことが明らかとなった。これらの結果は、XPG/2系統ノックアウトホモマウスの小脳におけるプルキンエ細胞は明瞭な変性が起こっていることを示した。次にこのマウスの小脳皮質細胞におけるアポトーシスを観察するためTUNEL法による染色を行ったところ、XPG/2系統ノックアウトホモマウスにおいてTUNEL陽性細胞が顆粒層細胞に多く観察されたが、プルキンエ細胞層においてはほとんど観察されなかった。この結果は、XPG/2系統ノックアウトホモマウスの小脳における様々な症状の現れは、プルキンエ細胞の変性だけではなく、その他の細胞のダメージが原因であることが示唆された。今回観察された脳内での変化が個体全体に及ぼす影響について今後検討しなければならない。
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