本研究では、以下の具体的課題を設定している。 課題1.視線入力インターフェースの補助として、指定位置を見たかを脳波で判別する。 課題2.脳波から視点判別できるような適切な視覚刺激を調べる。 課題3.ヘッドマンウトディスプレイ使用時に使える簡易な視点領域測定法を開発する。 課題1では、視線入力で発生する誤入力を防ぐために、視線で「選択した文字」が、「選択しようとした文字」かを脳波によって判別できるかを検討している。研究では、実際に見た文字背景が赤く変化した場合の脳波を正判定脳波、実際に見た文字の隣の文字背景が赤く変化した場合の脳波を誤判定脳波として、正判定脳波と誤判定脳波の判別を試みている。本年度は、脳波の空間的情報を有効利用した方法の検討と、判別に用いる脳波における適切なデータ選択方法の検討を同時に行った。その結果、脳波の空間的情報を利用すると判別率が上昇する可能性があること、及び、脳波の時間的再現性を考慮したデータ選択方法が判別率向上に重要であることが示唆された。 課題2では、点滅視覚刺激周波数に脳波が同期する脳波光駆動現象を視点判別に使用することを考え、本年度は、脳波光駆動現象を引き起こす適切な視覚刺激を調べた。その結果、脳波に影響を与えた点滅視覚刺激は、試した視覚刺激全体の1/3程度で、個人差が大きいために、適切な視覚刺激に関する有効な知見が得られなかった。 課題3では、眼電図を利用して視点がある領域を簡単に判定する方法を開発している。眼電図の問題は、直流増幅におけるオフセット調整とドリフト現象である。本年度は、交流増幅で得られた眼電図から視点領域を判定できるかを試みた。その結果、交流増幅時定数の影響を除くアルゴリズムの導入等により、約75%の割合で視点領域を特定できるようになった。今後は、瞬きの影響を除くなどの改良を加え、視点領域判定精度を向上していく。
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