本研究では、以下の具体的課題を設定している。 課題1.視線入カインターフェースの補助として、指定位置を見たかを脳波で判別する。 課題2.脳波から視点判別できるような適切な視覚刺激を調べる。 課題3.ヘッドマンウトディスプレイ使用時に使える簡易な視点領域測定法を開発する。 課題1では、視線入力で発生する誤入力を防ぐために、視線で「選択した文字」が、「選択しようとした文字」かを、脳波によって判別する方法を検討している。研究では、実際に見た文字背景が赤く変化した場合の脳波を正判定脳波、実際に見た文字の隣の文字背景が赤く変化した場合の脳波を誤判定脳波として、正判定脳波と誤判定脳波の判別を試みている。昨年度の研究で、脳波の時間的再現性を考慮した波形処理方法が判別率向上に重要であることが示唆されたことから、本年度は、脳波中から時間再現性のある特徴波形を抽出して判別に用いる方法の検討を行った。その結果、脳波中に時間再現性のある特徴波形が存在する可能性が示唆され、従来方法より10%ほど判別率が上昇することがわかった。しかし、背景脳波を効果的に除去する方法を考えないと、その特徴脳波が抽出されないこと、及び、適切な刺激を用いないと特徴脳波自体が発生しない可能性などが示唆された。 課題2では、点滅視覚刺激により発生する脳波誘発反応を視点判別に使用することを考え、本年度は、光点灯時に得られる視覚誘発反応を利用する方法を検討した。その結果、背景脳波を除去することによって、視覚誘発反応によると考えられる脳波振幅の増大現象が発生することが確かめられ、脳波振幅情報を利用して視点判別が行える可能性が示された。 課題3では、眼電図を利用して視点がある領域を簡単に判定する方法を開発している。我々が提案した交流眼電図から視点領域を判定できるかを種々の条件により試みた。その結果、水平方向では、約90%の割合で視点領域を特定できるようになった。しかし、垂直方向の視点領域の判別では、瞬きの影響や垂直方向での電位変化が少ないという眼電図の特徴により、さらなる視点領域判定精度の向上が必要である。
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