研究の目的は、無侵襲で連続的に非接触で組織血流量を測定できる、小型で安価なレーザスペックル血流計を開発するための基礎データを得ることである。初年度である平成12年度の研究において、以下の研究成果を得た。 (1)自己相関関数法による血流測定: 試作した自己混合型半導体レーザ(SM-LD)スペックル血流計の信号処理方法として、スペックル信号の自己相関関数から求めた相関時間の逆数を用いた「生体外の」血流測定を行った。回転するターンテーブルの円環溝内に注入した羊の全直について、ヘマトクリット値のみをパラメータとしたとき、或いは、光ビーム径のみ、または、透明盤裏の反射板のみをパラメータとしたときも、相関時間の逆数は血流速度に対して直線的に変化したが、その勾配と縦軸切片はパラメータの値によって変化した。この結果は、平均周波数法による血流測定結果と同様な傾向を示している。自己相関関数法が血流測定においても、或る程度、有効であることを確認した。 (2)SM-LDスペックル血流計と市販の血流計との比較: SM-LDスペックル血流計を用いて、人体上腕部の圧迫の度合いを加圧包帯で調節して、10秒間の圧迫時と解放後29秒間で測定した指球部の平均周波数の時間変化は、購入した市販の非接触レーザ血流計で同時に測定した血流速の時間変化と傾向が良く一致した。一方、SM-LDスペックル血流計の一点計測時間を0.05秒-0.1秒に設定して測定した、平常時の指球部に対するスペックル周波数の時間変化は、市販の超音波血流計で測定した血流速の時間変化と傾向が或る程度一致した。特に、心拍によるピークの数は良く合った。 このように、SM-LDスペックル血流計を用いて、非接触で、人体表在付近の血流速の相対値が心拍により変化する経時変化を或る程度測定できることが確認できた。
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