生物細胞懸濁液や生体組織に電場を与えると、細胞膜と媒質や細胞質との界面で分極するため(界面分極現象)、その見かけの誘電率が大変大きくなる。電場に交流電場を用いて、その周波数を掃引して誘電率を測定すると(誘電スペクトロスコピー)、周波数に依って誘電率が変化する誘電緩和現象が見られる。この緩和スペクトルを解析すると、細胞や組織の構造や電気的性質を調べることができる。この方法は細胞や組織の平均的な性質を調べるのには都合が良いが、個々の細胞や組織の局所部分の性質を調べることはできない。このような目的のために、誘電スペクトロスコピーを用いた細胞や組織の誘電イメージング法の開発を行ってきた。しかし、試作した測定システムは分解能、使い勝手、計測速度などの点でまだ実用システムとしては不十分である。このため、本研究では光学顕微鏡で試料の形態を確認しながら、そのインピーダンス・イメージを高精度で求めることができるように、光学顕微鏡に位置決め精度の高い自動ステージの組み込みを行った。現在、画像データーの取りこみと誘電計測の制御を行うためのプログラミングの開発を行っている。これにより、使い勝手が向上し、分解能の高い誘電イメージが得られることになる。 また、電極のインピーダンスは誘電イメージに大きく影響(電極分極)をする。このため、誘電イメージを定量的に解析することがしばしば困難になるので、電極分極の補正方法を検討している。現在のところ、走査プローブの高さ(電極間距離)を変えて測定した2つの測定データーを使いた補正法が有効と考えている。
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