インピーダンス・スペクトルはマクロスコピックな不均質構造に敏感であるので、生物細胞や組織のインピーダンス・イメージと光学顕微鏡像との間には強い相関がみられる。そこで、走査型誘電顕微鏡を光学顕微鏡に組み込み、光学顕微鏡像とインピーダンス・イメージを直接比較できるようにした。これによって、生体組織や細胞の形態と電気的性質の関係を明らかにすることが可能となる。今年度は、昨年導入した顕微鏡用X-Yステージの制御とインピーダンス測定制御を行うためのコンピュータプログラムを完成させることができた。測定装置には、以前に用いていた4192ALFインピーダンスアナライザーを4194Aゲインフェーズ/インピーダンス・アナライザーに替えることにより、測定精度の向上をはかった。ITOコーティング透明ガラス電極を使用した試料ホルダーを試作し、また、針状のプローブを顕微鏡のコンデンサーレンズの前部に装着することにより、光学顕微鏡像とインピーダンス・イメージの同時測定を可能にした。測定には、スポット、ラインスキャン、ラスタスキャンの三つのモードが可能である。光学顕微鏡像はCCDカメラよりコンピュータに取り込む。プローブ電極には、直径76μmあるいは25μmのテフロンコート白金線を挿入した注射針を用いた。注射針をガード電極、針内の白金線を測定電極、透明電極を対電極として、三端子の構成でインピーダンス測定を行うようになっている。 測定系の分解能をナイロンメッシュやステンレスメッシュを用いて検討した。生体組織として、植物の葉の上皮細胞について、インピーダンスイメージと光学顕微鏡像を比較したところ、気孔を構成している孔辺細胞と上皮細胞は異なるインピーダンスイメージ示し、二つの細胞を区別することができることが分かった。また、開いている気孔と閉じている気孔の区別も可能である。現在、血液細胞や動物細胞の組織培養系での測定の準備をしている段階である。
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