研究概要 |
[研究内容1] 肩複合体の多体動力学応答解析システムの開発(担当 蔦紀夫) 1.上腕骨頭と,肩甲骨,鎖骨,各種筋群から成る系に,上腕骨頭系から入力される3軸方向の動荷重または,生じる肩複合体系の3次元運動や支持筋群の動力学応答が解析できる筋-骨格系多体動力学応答数値解析システムを開発した. 2.個々の骨体を剛体とみなして要素座標系を定義し,骨体と隣接骨体間の相対運動を隣接骨体の要素座標系からの位置ベクトルや速度ベクトル等で表した上で,これらを順次座標変換を用いて全体系の座標に変換することによって,全骨体に集め問題を定式化した.また骨体間に界在する筋肉や靭帯の伸縮挙動や筋発生力,ポテンシャルエネルギー,減衰仕事等は,両骨体間の相対変形を筋付着両端点の位置ベクトル差から求めた.これらを上腕骨頭に作用する外力仕事,および個々の骨体要素の運動エネルギーと合わせて,ラグランジェ法により,系全体の運動自由度についての動力学運動方程式を統一した座標系上で構築した.これらの非線形系を時間増分形で解く数値シミュレーションシステムを構築した. 3.各種筋のモデル化についてはこれまで開発済の能動・受動特性をもつ筋系有限要素解析システムを併用して一連の解析を行った.また併せてこれらの簡易モデルの検討を行った. 4.既に開発済の上腕・前腕・多指ハンド系の筋-骨格系多体動力学応答解析システムと上述の肩複合体の数値解析システムを結合して,重量物の持ち上げや搬送作業など各種動荷重条件下で生じる系の動的応答の解析を可能にした. 5.解析法の妥当性を検証するために,実人間の重量物の持ち上げや搬送動作などの基本的な作業応答について,実人間の運動計測や筋電位計測などを行ってシミュレーションの結果と比較して,その有効性を明らかにした. [研究内容2] 人工体幹系の模型実験(担当 岩本剛) 肩複合体-胸郭・胸椎系(12椎体)-腰椎(5椎体)・腰盤系から成る人工体幹系モデルに人工の筋-靭帯系を装着し,さらにこれらに胴体のトルソ部を治具によって装着した模型を市販品を含めて製作した.実人間及び人工体幹系モデルについて上体を前屈,上体ひねりなどの種々の姿勢に変化させながら種々の縦荷重,ねじり,曲げ,横荷重およびそれらの組合せ負荷を与えて,肩複合体各部や体幹・脊柱各部に生じる変形,応力状態を求める一連の実験を行ない,作用負荷と局所の変形応力発生状態との関係を実験的に明らかにした.肩複合体,脊柱系の関節靭帯や縦靭帯および,椎体間を結合する各種体幹系筋,ファセット関節などの個々の因子の影響を一連の計測実験とそれらの装着や取り外しなどを組み合わせて求め,これらと系の応答の関係を明らかにした.
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