平成12年度は、実験装置の設計・製作と動作システムの構築、及び流れの測定方法の検討に焦点を絞って研究を行った。 実験装置の設計においては、コンタクトレンズ(以下、レンズ)と角膜・強膜とを単純な形状で近似することとして球面を平面に置き換え、それぞれ平面円盤、平面とした。角膜と強膜の曲率半径の違いは、両者の境界で平板の傾きを変えることで与えている。実験装置の取扱いや流れの測定を容易にするために、レンズ模型は直径175mm(実物の20倍)とし、実際のコンタクトレンズにおける流れとの流体力学的相似性を与えるために、涙液に対応する作動流体には粘度を広範囲に選択できるシリコンオイルを採用した。シリコンオイルをプールする容器はアクリルで製作し、容器下面から流れを観察・測定可能としている。レンズと容器底面(角膜に相当)との間隙は0.5mmから5mmの範囲で設定可能である。レンズ模型は、ステッピングモータ、送りネジ、リニアガイドを組合せた直動システムで容器底面に平行に移動させる(移動速さは最大24mm/sec)。角膜から強膜への乗り上げによるレンズの姿勢変化は、レンズ模型の移動に伴う揺動運動で近似しカム機構により与えている。レンズ模型の移動速度・パターンはパーソナルコンピュータからの信号により任意に設定できる。 流れ測定法の検討では、装置規模からプローブ挿入や光学的測定手法の導入が困難であると考え、トレーサを用いた可視化手法を調査し、トレーサに蛍光粒子(平均粒径163μm)を選定した。現在、瞬目時の周期的非定常流れを画像処理により定量的に測定するための準備を行っている。 流れの数値計算おいては、自由表面と移動境界を扱う流れ計算プログラムの構築を進めている。
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