研究概要 |
膝関節にタンパク質融解のためのパパインを投与した,日本白色ウサギを7日間ケージ内飼育し,塗擦後大腿骨と脛骨中央部で骨切りして膝関節部を単離し,実験対象とした.比較のために,パパインを投与しなかった反対側膝関節を対照群として同様の測定を行った.実験装置をロボットアーム,多軸力覚センサ,制御コンピュータで構築した.力を制御信号としたフイードバック制御により,ロボットの末端効果器に固定した大腿骨顆部が,脛骨平板を滑らかにたどるように動作を構築した.測定条件は,荷重10Nを加えた直後,150s,300s,600s,1800s,2700s時間経過後の6種類とし,いずれも,摩擦運動を開始した直後の摩擦係数を起動摩擦係数として求めた.9頭18関節を対象とした実験を行った結果,静止荷重0sにおける対照群の摩擦係数(平均値±標準偏差)は0.017±0.003に対し,パパイン投与群0.018±0.003であり,差はなかった.これに対し静止荷重時間150sにおいて対照群0.13±0.11に対しパパイン投与群では0.25±0.11と有意に上昇した(P<0.05).静止荷重300sにおいても対照群0.22±0.19に対し0.48±0.14と,有意に上昇した(P<0.05).静止荷重600sにおいては対照群0.34±0.23に対し0.65±0.13と有意に上昇し,差が最大となった(P<0.05).静止荷重1800sでは,逆に両群の差が減少し,対照群0.55±0.10に対しパパイン投与群0.62±0.11となり,静止荷重2700sにおいても同様に,対照群0.60±0.10に対しパパイン投与群0.69±0.14であった.静止荷重中における関節軟骨の変形量はパパイン投与群では小さく,対照群では大きかった.このことから,パパイン変性関節は,表面変形による潤滑流体膜の保持ができず,早い時期に固体接触が発生し,摩擦係数が上昇したと考えられた.
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