これまでラメラ幅16nmで親水/疎水型のミクロドメイン構造表面を有するポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)-ポリスチレン(PSt)-PHEMA ABA型ブロック共重合体(HSB)は接触及び粘着リンパ球の壊死を抑制することを明らかにしてきた。平成12年度は、より高度な血液適合性材料の分子設計作業理論の構築を目的として、HSBの8nm、16nm、43nmの異なるラメラ幅を有するミクロドメイン構造表面に対応する粘着リンパ球の形質膜内蛋白質のアミノ基を透過型電子顕微鏡(TEM)にて解析した。さらに、そのTEM像に対して画像処理解析を行いアミノ基の分布状態を定量的に評価した。疎水性の均一表面のPSt、親水性PHEMAと疎水性PStとが均一に分散している構造表面を有するPHEMA-PStランダム重合体(HSR)を対照群のポリマーとして用いた。ポリマー表面とリンパ球との相互作用はマイクロスフィアカラム法を用いて行った。室温にて一定時間浸せきした後、ポリマービーズをカラムから取り出し、粘着リンパ球の形質膜内蛋白質のアミノ基の検出のためにHydroquinon-Tetranitro Blue Tetrazolium処理を行った。その結果、HSBの8nm、43nmのラメラ幅のミクロドメイン構造表面に対応するリンパ球粘着面の形質膜内蛋白質のアミノ基は部分的にCappingを形成していた。それに対して、ラメラ幅16nmのミクロドメイン構造表面に対応するリンパ球粘着面の形質膜内蛋白質の分布状態は正常リンパ球のそれと同様の分布状態であった。また、対照群ポリマー表面に粘着したリンパ球は壊死を呈していたため、形質膜のアミノ基の解析はできなかった。以上のことから、HSBにはリンパ球の形質膜流動性を抑制する最適なラメラ幅が存在することが明らかになった。
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