わが国の慢性腎不全患者数は、平成12年末現在およそ20万人を越えるが、その90%以上の患者が受けている治療法が血液透析である。この治療法は1年間に患者一人当たり500万円の医療費が健康保険で賄われている上、1回5時間の治療を週3回病医院で受けなければならないため、患者のQOLは決して高くない。本研究の目的は血液透析膜と治療に必要な透析液とをゲルを用いて一体化することで、携帯が可能な血液浄化システムを構築することである。ゲル内に分散させた吸着体や酵素は、拡散除去された溶質を吸着または分解してゲル内を長期間低濃度に保つために二次的に作用する。吸着体としては活性炭を用いてきたが、これまでは微粉炭の流出を抑制するために、粒状炭を使用してきた。ところが粒状炭では重力の影響でゲル内に均一に分散させることが難しかった。そこで敢えて粉末炭を使用したところ、均一なゲルを作製することができた。このモジュールの溶質除去性能は、携帯型血液浄化法として既に20年の臨床実績がある腹膜透析に匹敵することがわかった。モジュール作製の容易さ、確実性を向上させるためにも粉末炭の利用が必須と思われた。微粉炭の流出についてはメッシュフィルターを組み合わせることで改善できることも分かった。さらに有用タンパク質の漏出についても検討を行った。タンパク質を1週間当たり15g程度漏出する血液透析濾過法が10年以上の実績があるので、この程度の漏出は安全と考えられる。本モジュールでの漏出量は最大10g前後と見積もられ、この点でも目標を達成する事ができた。今後は血液系の実験を行うことで実用性を確認したい。
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