本研究は、生体UMS技術を用いて生体高分子の音響特性を測定し、その測定結果から試料の物理・化学特性を明らかにしようとするものである。初年度となる今年度では、まず精密測定を行うための安定な温度環境を実現した。この環境下でVHF帯における水溶液の音響特性を測定し、高い測定再現性を達成した。 (1)精密測定温度環境の実現 本研究で用いる超音波スペクトロスコピーシステムは0.001%オーダーの高い測定分解能を有する。しかし、この測定精度を達成するためには、高い温度安定度が必要である。そこで、0.001℃の温度制御分解能をもつ局所空調装置を導入することにより、±0.01℃の試料温度安定性を実現した。 (2)糖類水溶液の基礎音響特性測定 上記の温度環境における測定精度を検証するため、水溶液試料の音速、減衰係数、音響インピーダンスの周波数特性を50-200MHzで測定した。試料としては、分子量1万のデキストラン水溶液を取り上げた。実験の結果、音速においては±0.002%、減衰係数と音響インピーダンスにおいては±0.5%の繰り返し再現性を達成した。 (3)ポリエステルフィルムの音響特性測定 生体高分子材料のモデルとしてポリエステルフィルムをとりあげ、周波数60-220MHzにおいて音速、減衰係数、音響インピーダンスの周波数特性および密度を測定した。この周波数帯における音速と減衰係数の周波数依存性を明らかにした。
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