本研究は、生体UMS技術を用いて生体高分子の音響特性を測定し、その測定結果から試料の物理・化学特性を明らかにしようとするものである。本年度は、音速の周波数依存性を精密に測定するため、複素量計測を用いた音速測定を導入した。さらに、固体高分子の音響特性の周波数依存性・温度依存性を測定した。 (1)複素量計測を用いた音速測定 速度分散をもつ試料の音速の周波数特性を連続的に測定するため、複素量計測を用いた音速測定法を導入した。液体試料として水を、固体試料としてポリエステルフィルムを取り上げ、100〜200MHzにおける音速の周波数特性を測定した。この周波数帯で速度分散がないとされる水では、音速は一定であり、ポリエステルフィルムでは、変化率で0.02(m/s)/MHzオーダーの速度分散が認められた。 (2)ポリエステルフィルムの音響特性の温度依存性測定 前年度、生体高分子材料のモデルとしてとりあげたポリエステルフィルムに対して、60〜220MHzの周波数範囲で、20〜26℃の範囲における音響特性の温度依存性を測定した。温度が高くなるにつれて、減衰係数は大きく、音速は小さくなることがわかった。 (3)音響特性の周波数依存性解析方法の開発 本申請者は、減衰係数の周波数特性のべき乗特性を超音波によるキャラクタリゼーションの指標とすることを提唱してきた。従来、緩和周波数を決定するために用いられてきた、減衰係数を周波数の2乗で割る表現方法と、減衰係数のべき乗特性の対応関係を明らかにすることができた。
|