本研究は、生体UMS技術を用いて生体高分子の音響特性を測定し、その測定結果から試料の物理・化学特性を明らかにしようとするものである。本年度は、まず、本研究の音響特性測定法において、参照媒質の音響特性に求められる精度について検討を行った。さらに、生体高分子溶液の音響特性を測定し、その周波数依存性の解析を行った。 1.参照媒質の音響特性に求められる精度 生体超音波スペクトロスコピー・システムによる音響特性測定法においては、水と合成石英ガラスを参照媒質として用いている。測定においては、参照媒質の音響特性の値は、文献に基づいて温度から決定されている。参照媒質の音響特性に求められる精度について検討を行った。数値計算によるシミュレーションの結果、現在のシステムの測定再現性では、水の音速と密度は±1.2%、減衰係数は±2.4%、合成石英ガラスの音速と密度については±1.2%の精度があれば十分であり、現在用いている文献値は十分な精度をもっていることがわかった。 2.生体高分子溶液の音響特性測定とその周波数依存性解析 生体高分子溶液として、濃度25%のブドウ糖水溶液の減衰係数および音速を超音波周波数20-700MHzの範囲で測定した。減衰係数の周波数特性に対して、前年度開発した周波数依存性解析法を適用した。減衰係数のべき乗の周波数特性は、単一緩和のフィッティングでよく合うことがわかった。その結果、緩和のパラメータとべき乗の周波数特性の対応関係を明らかにすることができた。 さらに、濃度5〜25%のブドウ糖水溶液の減衰係数に対しても、同様な解析を行ったところ、本手法が適用できることが確かめられた。
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