本年度は、『語叢』『称』などの、近年出土した「格言集」と考えられる新資料につき、文字や解釈を再検討しつつ、伝世文献との関係が想定される「格言」を調査し、データベース化を進めた。 平成10年上海博物館新収の戦国楚簡については、平成5年に荊門市より出土した戦国楚簡(『語叢』などを含む)と密接な関連を有するものと考えられ、平成11年度末には公刊という形でその全貌が明らかとされる予定であった。本年度の「研究実施計画」において、この新資料を本研究に包括する可能性にも言及したが、本報告の段階では、未だ当該資料が公刊されておらず、これを視野に収めた研究を行うことも当然不可能である。従って、「研究計画調書」で述べた計画通り、必ずしも新出土資料と関係があるとは考えられていなかった、旧来の伝世文献について、基礎的な作業を進めた。具体的には、『商君書』去強・説民・弱民3篇の相互関係、特に去強篇の成立について考え、また『孟子』中における「格言」の用いられ方、特に他学派との論争においてのそれと、自学派内部(孟子と弟子との問答)におけるそれとの相違について確認するなどした。これら数点の伝世文献における「格言」のあらわれかたについても、現時点までに得られた成果をまとめつつある。 なお、「格言」の権威の変遷、という視点からは、戦国より漢代の史書に記載された「格言」とその扱われ方について、特に論争相手による承認という観点から確認作業を進めている。
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