(1)文献調査:平成12年度の文献調査については、研究計画に基づき、先ず平成12年の夏に、海外出張して、中国上海の復旦大学、上海師範大学、上海図書館、杭州の淅江大学、淅江省図書館、武漢の武漢大学、華中師範大学、湖北省図書館などの研究機関や図書館にて宋代の禅文献についての調査を行ったほか、禅とゆかりのある江南地域の天台山、天童寺、五祖寺などの禅寺にて実地調査を行った。それらの研究機関や図書館における禅関係文献が整理され、利用可能となっているものが確かにあるが、未整理のままになっているものが少なからず、今回はそれらの一部の所在を実際に確認することができた。そして次に、それらの調査結果を踏まえつつ、他方、日本国内において、永平寺や京都大学、花園大学、駒沢大学へ行き、『正法眼蔵』に引用されている宋代の禅文献の一部を確認することができた。一部の例外を除けば、ほぼ研究計画通りに実施できた。 (2)文献の整理と関連図書の収集:日本語と中国語の両方に対応できるパソコンをそれぞれ購入し、調査してきた文献を整理し資料化を行った。また、江戸時代に刊行された漢訳『正法眼蔵』の一部を購入した。この書物を現在の流布本『正法眼蔵』と比較対照してみると、『正法眼蔵』のテキストはもともと和文で書かれたのではなく、漢文で書かれたのではないかということが明らかになった。さらに、日本思想史学会などに出席して、研究情報の収集や研究の打ち合わせを行った。 (3)研究成果の発表:本研究の成果の一部を申請者が加入している日本宗教学会で「道元の課題」という題で発表した。また、昨年の夏に中国へ出張した際、武漢大学宗教系が催した座談会で、「禅と言語」を題とする研究発表を行った。 上記の研究成果を踏まえ、平成13年度は北京図書館や日本の国会図書館、東洋文庫などにて文献調査を行う一方、それらの成果を、申請者が現在執筆している著書「禅と言語」に取り入れて出版し、公表する予定である。
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