ディーパンカラシュリージュニャーナの『大経集』のデータ・ベース化を終え、これに基づいてチベット大蔵経の諸版間に見られるヴァリアントを調べ、校訂テキストを完成した。これを数度の校正の後に、テキストのデータ・ベースとともにPDFファイルにて公開する予定である、また、引用されている全経典のリストと索引を章ごとに一覧表とし、その索引を付した報告書を完成した。これには、ディーパンカラシュリージュニャーナに関する内外の研究をリストアップしている。 ディーパンカラシュリージュニャーナのその他のテキストに見られる大乗経典の引用に関する研究としては、特に般若経を中心におこなった。その結果として、般若経の中でも『八千頒般若経』との関係が深いことが解明された。また、彼に帰されている『十万頒般若経』の概説書の『小十万頌般若経』を調査し、本テキストは膨大な量の同経を読誦することができない者たちのために彼が編纂したコンパクト版であることを解明した。 さらに、彼の『菩提道灯論細疏』における大乗経典の引用に関する調査も継続して行った。今回は「三昧」に関する部分の内容を解析し、彼の師であるボーディバドラとの関係が明らかになった。これらの研究は、現在計画中の「チベット仏教におけるラムリム思想の基盤に関する研究」の基礎となるものである。
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