本研究では、まず第1点として、絵画、イラスト、アルバムカバー・デザイン、テーマパーク、彫刻、家具デザイン、ギーガー美術館等の室内設計、映画・舞台設計等を含むHRギーガーによるほとんどの作品、ならびに関連文献資料に関わるデータを収集し、ギーガー関連の資料をデータベース化した。このことにより、データベースの活用が今後のギーガーならびにサブカルチャー関連の研究の便宜に寄与するという本研究の第1目標を達成した。次に第2点として、これらの資料分析を通じて、ギーガーを中心とする「サブカルチャー」の定義をめぐり、日米比較研究という観点から本研究では以下の点を明らかにした。ユダヤ-キリスト教主義における「神」の存在/不在が「サブカルチャー」という概念形成に大きく関与しているということ。日本におけるギーガー関連文化は、あくまでも商業主義的・ファッション主義的なものとしてとらえられ、一時の流行で終わってしまっている。一方、欧米におけるそれは、ゴシック文化、シュールレアリスム、ファンタジー、バイオメカノイド、ロックンロール、サイエンス・フィクション、エロス、グロテスク、死といった西洋文化圏において培われ、その長い歴史のなかで連綿と継承されてきた反キリスト教的要素を緻密に積み上げたカウンター・カルチャーである。これは、前者において「対抗」という要素が欠けていることと極めて対照的な現象であると考えられる。この点については、国内外の研究機関にて論文発表を行うというかたちをとることでひとつの成果とした。本研究の成果については近くインターネット上で公開を予定している。
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