研究概要 |
本研究は,表情を通した感情判断において,感情喚起刺激,状況,表出者の国籍(文化)のような文脈情報がどのように寄与しているかを実験的に検討することを目的とする。特に,先行研究において取り上げられることのなかった表出者の国籍の要因を操作し,表情をはじめとした情報源の相対的重要性,および相対的重要性に及ぼす表出者の国籍,状況の影響を検討する。 研究は表情刺激の収集・選択,情報の定義、感情判断実験の3つの段階に分かれるが,本年度はまず第1段階として,日米表出者の表情を収集した。さらに、実験刺激として適当な表情と感情喚起刺激を選ぶために,被験者に表情と喚起刺激を単独で提示し,幸福,悲しみ,怒り,恐れ,嫌悪、驚き,快-不快,強度の各尺度へ7段階で評定してもらう作業を進め,アメリカ人表出者については作業を終えた。この評定の平均値を表情と喚起刺激から得られる情報の質と量と見なし,選択された刺激を用いて表情と喚起刺激の相対的重要性を検討するため,文脈情報とともに表情と喚起刺激を組み合わせて提示して感情判断を行う実験を,アメリカ人表出者の表情を用いて実施した。その結果,表情が安定して重要な情報源であることがわかった。来年度は,日本人表出者を刺激とした実験を実施し,国籍の効果について検討を進める。 感情表出と国籍に関連して,中国人大学生を対象に調査を行う機会を得たので,状況や対人関係についての情報が感情表出にどのような影響を及ぼすかを調査し,日中比較を行った。予想では中国人大学生のほうが表出的であると考えたが,結果では総じて日本人大学生の方が表出的であった。また,中国の男子学生が特異的な表出パターンを示していた。
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