平成12年度は、チンパンジー4個体を対象として、「花」「木」「草」の自然物写真を用い、カテゴリー内の個々の種類の間の弁別が可能であり、同じカテゴリー内のものとして等価であることを認識していることを証明する研究をAnimal Cognition誌に投稿した。現在印刷中である。 次に、チンパンジー3個体を対象として、自然概念である「花」概念の表象様式を検討した。 チンパンジーは、モニター上に提示される自然物写真の中から、花の写真を選択するように訓練された。3頭のチンパンジーはいずれもこの課題を学習し、テストして新奇な写真刺激を提示されたときにも、期待値よりも有意に高い割合で花の写真を洗濯することができた。次に、チンパンジーは、モノクロ化やモザイク化などのさまざまに画像処理を施された写真刺激によるテストを受け、画像処理による全般的な成績の低下は見られるものの、特定の処理による特異的な成績低下は見られず、チンパンジーの概念学習が特定の物理的特徴(色や細部の情報)によるものではないことを示した。現在、この研究の成果を投稿準備中である。 次に、3個体のチンパンジーは、図鑑の絵を用いたテストを受けた。図鑑の絵は、実物を元に描かれたものであり、実物(写真)との類似性は高いと考えられたが、3個体のうち2個体は、ほとんど期待値と変わらないまでの成績低下を示し、写真とはまったく違うものとして知覚されていることが示唆された。さらに、「漫画絵(イラスト画)」のような実物との違いが大きいものによるテストでも、3個体の成績は同様であった。唯一成績のよかった1個体については、「言語」訓練の経験をもち、200以上の図形言語による語彙をもつ個体であった。この個体については、漫画絵を刺激としたテストの成績は、写真を用いたテストの成績とほとんど変わりなく高い成績であった。これらの結果は、アイコン(参照するものとの類似性をもつ記号)の認識が、学習無しに起こるものではないこと、少なくともヒトの創出したアイコンは、ナイーブなチンパンジーにはアイコンとして認識されないことが示された。 これらの成果は、平成12年度の日本動物心理学会で報告した。
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