本研究では、覚醒アカゲザルを用いて方位弁別学習の受容野特性に及ぼす影響を、行動科学的手法として弁別訓練・生理学的手法として内因性信号を用いて調べることを目標としている。今年度は、麻酔下動物用に開発された装置を目的に合わせ改良し、覚醒動物からの記録を目的とした。 光学測定において覚醒動物を用いる短所は、撮影される大脳皮質の振動によるノイズである。これは、心拍や呼吸による小さなノイズの他、動物の頭部の動きにともなう大きなノイズによる。心拍を制御することは不可能であるため、画像記録の開始を呼吸のリズムに同期させることによって、ノイズを低減させようとした。結果、呼気の温度を測定することによって、呼吸のリズムを画像開始のトリガー信号に変換することができた。しかし、この方法は短期間しか有効ではなかったため実用的ではなかったが、画像を加算することでこうしたノイズを相殺することとした。また、動物の体の動きによる起こるノイズは、モンキーチェアにセンサーを取り付け、体が動いている間は画像取込みトリガーを制御用コンピュータが受け付けないようにすることによってほぼ解決した。 また、光学測定が可能なように硬膜を除去すると結合組織が記録部位に進出するため、これまでは1週間以内に記録できなくなっていた。そこでシリコンゴム製の人工硬膜を作成し、切開した硬膜と皮質との間に留置することによっての約1か月間測定可能な状態を維持できた。 さらに、実験装置の仕組みにより、動物の状態に応じては実験を中断できないため、動物の注視部位によらず常に同じ条件で刺激できるよう、プロジェクターにより全視野的に刺激を提示した。しかし、刺激は高い空間周波数で提示できず、コントラストも低かったため、標的部位である第一次視覚皮質を十分に活動させることができなかったと考えられる。 今後、CRTディスプレイを用いるなど、問題点を解決することとした。
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