条件づけにおいて動物が用いると想定される要素的・形態的・階層的方略について、理論的ならびに実験的検討を行った。まず、ラットやハトが状況に応じてこれらの方略を使い分けていることを研究代表者の過去の実験を中心に展望し、国際心理学会議のシンポジウムで発表した。次に、複合刺激内の要素的学習ということで近年注目されている知覚学習について展望論文をまとめた上、日本基礎心理学会のフォーラムで知覚学習の観点からヒトの認知心理学研究への提言を行った。 実験研究としては、4つの側面から検討した。まず、平成10〜11年度の科学研究費補助金(奨励研究(A):10710034)で実施した「弁別刺激の階層性をハトが理解できるか」という実験について、本年度の補助金によってデータを再整理し、動物認知専門誌への掲載決定に至った。 残る3研究は本年度に新たに申請したものである。まず、要素的学習説と形態的学習説の区別にとって重要な反応加算性について、パヴロフ型条件づけ事態でハトを被験体とした検証を行うため専用の装置を購入した。現在、装置のセットアップ中である。 第2研究では、1次刺激呈示中のいつ反応すれば強化子が得られるかを高次刺激が信号するという課題をハトに与えた。この課題は1次刺激に基き行われる時間計測行動を高次刺激が制御するという階層的学習であることを実験的に明らかにした。この研究は現在論文にまとめている。 最後に、階層的学習の一種として、オペラント反応の文脈制御についてラットを被験体として復元効果の研究を行った。第1実験は単純オペラントの復元効果であり、レバー押し反応をある文脈(実験箱)で形成してから別の文脈で消去し、元の文脈に戻すと反応が復活することを示した。第2実験は音刺激に対してレバーを押すという弁別オペラントの復元効果を同様の手法で実証した。復元効果の研究は、学習と動機づけの専門誌に発表した。
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