要素的学習と形態的学習に関連して、系列的に呈示された複数刺激の学習における系列位置効果について、先行諸研究の展望論文を学部紀要に発表した。また、ラットの風味刺激学習事態で系列位置効果の実験を行った。実験の結果、典型的な系列位置効果を得ることができたが、手続きを少し変更して行った実験では確認できず、現象の頑健さに疑問が残った。 階層的学習について、時間計測行動を高次刺激が制御するというハトの実験(昨年度実施)を元に理論的考察を行った。現在、実験結果とともに論文をまとめており、専門誌に投稿予定である。なお、ハトの階層的学習に関しては、平成10〜11年度科学研究費補助金で実施した実験を、昨年度の補助金にてデータ分析したものが本年度、専門誌に掲載されたことを付記しておく。 階層的学習として、ラットにおける復元効果の研究を複数の実験事態で行った。パヴロフ型条件づけ事態では、反応除去法として消去訓練を用い、獲得、消去、テストの文脈く実験箱)を、A⇒B⇒Aと変化させたときに生じるABA復元効果と、A⇒A⇒Bと変化させた場合のAAB復元効果について、消去期間の影響を検討した。実験の結果、消去期間を延長してもABA復元効果には影響しないが、AAB復元効果は弱めることが判明した。オペラント条件づけ事態では、反応除去法として、消去の代わりに、省略訓練(実験1)ならびに反応非依存強化子呈示(実験2)を用い、ABA復元効果を確認した。この2つの実験は1つの論文にまとめて専門誌に投稿中である。最後に、回避条件づけ事態においてABA復元効果の実験を行ったが、回避反応の消去が迅速で、意味のあるテスト結果を得られなかった。 なお、本年度実施予定であったハトにおける反応加算性についての実験は、加算性の有無では要素的学習と形態的学習を区別できないとの研究が海外の研究者により発表されたため、中止した。
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