研究概要 |
聴覚刺激の選択過程における注意の機能について,事象関連脳電位(event-related brain potential,ERP)を指標として検討を行った。特に,非注意刺激の処理過程に注意が及ぼす効果について重点的に調べた。 実験1においては,非注意刺激に対して150-300ms潜時帯で出現する陽性波(Pd)が反映する処理過程が,自動的処理あるいは制御的処理のいずれを反映しているのかについて,刺激を高速(刺激間間隔20-150ms)で呈示することによって検討した。このような事態では,非注意刺激に対して制御的処理を行うための時間的余裕はほとんどないと仮定できる。したがって,もしPdが制御的処理を反映しているのであれば,その振幅は減衰すると予測される。 純音を左右耳に,上述の刺激間間隔で無作為な順序で呈示した。さらに,比較のためにPdが出現することが知られている,比較的長い刺激間間隔(200-500ms)で刺激を呈示する条件も設けた。被験者には,指定されたいずれかの耳に注意を向け,時折呈示される弱い音の呈示回数を計数するよう教示した。 実験の結果,刺激間間隔が長い場合にはPdが出現したが,短い場合には出現しなかった。このことから,Pdは制御的処理を反映することが示唆された。今後は,Pdに反映される制御的処理が具体的にどのようなものなのかを検討する必要がある。
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