研究概要 |
本研究の目的は,小・中学校における児童・生徒の反抗的問題行動に及ぼす教師側対応の影響を明らかにすることであった.特に,児童・生徒の挑発的機能を持つ行為と教師のそれに対する対応から展開される相互作用を分析するために,平成12年度は,次のような基礎的調査を行った.(1)中学校の教師305名を対象とした調査研究(質問紙,無記名),および,(2)12の中学校生徒指導・教育相談担当教員とからの聞き取り調査,である.その結果,児童・生徒の挑発的問題行動に対する教師の受けとめ方や具体的対応の実態について,以下のような結果が得られた. 身なりなど学校のルールに対する違反に対して,教師側の解釈はさまざまであるが,大きくは,「今後の本人,あるいは,学級・学年にまで波及しかねない危険な兆候である」との解釈が先に立つタイプ,「生徒個人の内面のストレスなどが反映されたものである」と解釈するタイプ,および,「何らかのかかわり,注意引きの機能を持つ行いである」と解釈するタイプである. これらの問題行動の解釈の違いが,「厳しく指導する」,「前後関係から心理的背景の理解につとめる」,「他のかかわりを増やすなどの対応を検討する」といった,具体的指導の違いと関係が深いことも確認された. 当然のことでもあるが,問題の理解の仕方,問題の捉え方における「文脈」が異なれば,具体的対応と,その後の生徒-教師間の相互作用としての展開が異なってくることが確認された.とかく,ハウツウ的な対応方法の吟味が議論や研究の中心となりがちな領域ではあるが,それに先立つべき問題行動の理解について,平成13年度,さらに調査をすすめる予定である.
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