注意欠陥多動性障害児の認知や情動の特性と、注意欠陥多動性障害児を中心とした軽度発達障害児の自己意識、自己概念の特性について、以下の点から文献研究をすすめた。 (1)ウェクスラー知能検査のなかで、Cohen(1952)は下位検査の順唱・逆唱・算数・符号で必要とされる「鋭敏で転導されない注意」を「注意散漫からの解放因子」と名づけている。この「注意散漫からの解放因子」という観点から知能と注意の障害はどのような関連があるのか (2)鹿島ら(1986)の注意とその障害の分類に基づき、注意の強度・持続性・範囲の障害(注意が喚起されにくく、喚起されてもすぐ減弱する、注意しうる量が少ない)、選択性・集中性・安定性の障害(一定のものに注意が定まらず、他の重要でない刺激により容易に転導する)、転換性・易動性の障害(注意が柔軟に他に振り向けられない)、言語をはじめとする高次精神機能と随意的注意の障害(企図や努力、ことばなどの指示によって注意障害が改善しない)についてどのような特性がみられるか (3)Sandoval(1977)のADHDの衝動性指標や坂野(1992)のパーソナリティの気質的側面の指標で示された、熟慮性・慣れの速さ・興奮の集中性・行動や思考の調節と、注意の障害はどのような関連がみられるか (4)ADHDの子どもは度重なる失敗経験のために挫折感や無力感を持ちながら学校生活を送り友人関係をうまく形成していくことが困難であるといわれている(McWilliams J.:1993)。ADHDの自己意識のついてどのような特性がみられるか。また、これらの結果からどのような臨床心理的援助が有効であると考えられるか
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