研究概要 |
本年度は,調整型セルフ・コントロールの実行を決定する要因について内的要因(個人差要因)と外的要因(状況)の視点から検討した.研究1では,セルフ・コントロールの行動レパートリーの個人差を内的要因,刺激文によって操作された先行状況を外的要因とした.調整型セルフ・コントロールで用いられるcontrolling responseは,その課題志向性から2つに分類されることが明らかになり,課題志向的な調整型セルフ・コントロールには内的要因と外的要因の交互作用が,非課題志向的な調整型セルフ・コントロールには外的要因の影響が見出された.また,外的要因のうち,"目標達成の困難度"が高まると課題志向的な調整型セルフ・コントロールは減少するが,非課題志向的な調整型セルフ・コントロールはむしろ増加することが明らかになり,調整型セルフ・コントロールが有する機能の多様性が示唆された.研究2では,連続失敗経験場面を設定して,"目標達成の困難度"に対応する外的要因を行動に随伴する結果として操作し,課題志向性による調整型セルフ・コントロールの機能の違いを検討した.外的要因の影響として,課題志向的な調整型セルフ・コントロールは失敗経験を重ねると減少する傾向にあるが,非課題志向的な調整型セルフ・コントロールは失敗経験によって増加し,さらに失敗を重ねても維持されることが明らかになった.内的要因に関しては,調整型セルフ・コントロールの行動レパートリーが多い被験者は,レパートリーの少ない者に比べ,状況の困難度により柔軟に対処していることが示唆された.個人と状況に応じた調整型セルフ・コントロールを適用することで,情動的・認知的なストレス反応がより効果的に制御されるだろう.
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