改良型セルフ・コントロール(結果を予測して、当面は意図的に自らにストレス事態を課す)の持続は、これと同時に、どの程度適切な調整型セルフ・コントロール(現在進行中の行動を妨害する情動的・認知的な反応の制御)を実行できているかに大きく依存している。平成12年度の研究成果により、調査型セルフ・コントロールで用いられる反応は、その課題志向性から2つに分類されることが明らかになった。そこで、本年度の研究では、改良セルフ・コントロールが先行する状況で、課題志向的な調整型セルフ・コントロールを併用させるアナログ・スタディを実施することで、2つのセルフ・コントロールの効果的な組み合わせ方法について検討した。"教員採用試験に合格するため、他にやりたいことがあってもそれを我慢して試験勉強に取り組んでいる"大学4年生46名を、改良型セルフ・コントロールが先行する状況にある被験者とした。ベースライン期間には、全ての被験者に対し、勉強時間とその内容の自己記録を求めた。この手続きは、改良型セルフ・コントロールの先行を定着されるためのものでもあった。その後、訓練群(n=23)の被験者には、試験勉強を継続するのに役立つ課題志向的な調整型セルフ・コントロール(自己教示)を適用させた。勉強開始前、勉強中(順調に進んでいる(いない)時)、勉強終了後(満足した(しなかった)時)に用いる教示内容を3回の実験のセッション中に選択・練習し、自宅での適用と記録を求めた。統制群(n=23)には、ベースライン期間と同様の手続きを継続した。その結果、訓練群は統制群よりも試験勉強に関連したセルフ・コントロール行動が増加し、試験勉強に取り組む時間の伸びも大きかった。以上より、課題志向的な調整型セルフ・コントロールには改良型セルフ・コントロールを促進する機能のあることが明らかになった。
|