本研究の目的は、現職教員とスクールカウンセラー志望者に対するシステマティックな訓練方法を開発し、その効果を実証することであった。平成12年度は、これまでのスクールカウンセラー制度の現状とその活動についてその問題点を明らかにすることを中心に研究した。これまでの調査研究の結果を分析したところ、スクールカウンセラーの受け入れ体制と受け入れ窓口の担当教員の意識がスクールカウンセラーの活用に大きく影響していることが明らかとなった。同一のカウンセラーが配置されている学校間でも、その体制の違い、管理職の意識、担当教員の意識の違いによって活用方法の異なりが見られた。また、カウンセラー側の態度に関しても、学校内に設置されている相談室で相談を「待っている」ものと、積極的に「出ていく」形の関わりをしているものがあり、それぞれ異なった成果を上げていることが明らかとなった。問題点としては、継続的に同じ学校に勤務しているスクールカウンセラーの場合は、「待っている」対応が効果的であるが、拠点校方式などで、同じ学校には月に2回程度しか勤務できないカウンセラーの場合は、「出ていく」対応をし、しかもカウンセリングよりも教員へのコンサルテーションの方が効果的にであった。 本年度のもう一つの目的であった、北米のスクールカウンセラーの訓練方法の視察では、3カ所の大学院を見学することができた。その結果、北米では、現在スクールカウンセラー不足や、スクールカウンセラーが対応する問題の質の違いが生じており、その対応に苦慮していることが明らかとなった。そのための一つの対応策として、これまで教員の資格を有し、教員経験が3年以上あるものがスクールカウンセラーの資格試験をうけることができるという制度が改定された州がいくつかあり、より専門的な臨床心理学、カウンセリング心理学の知識と技術を有したスクールカウンセラーの育成を行うようになった。これは現在の日本の状況と類似しており、北米でもスクールカウンセラーの養成に関する効果的な方法を模索しているところであることが明らかとなった。今後、北米の専門家との共同研究も考慮している。
|