本研究の目的は、価値観や意見に関する多様性/等質性の認知が人々のコミュニケーションに及ぼす影響について検討すること、すなわち、多様性の認知が当該争点のコミュニケーションを促進するのか、また多様性を許容するネットワークと異質性を排除するネットワークでコミュニケーションスタイルがどのように異なるのかを明らかにすることである。1年目に当たる本年度は、高松市民を対象としたスノーボーリング法による郵送調査を実施した。スノーボーリング調査とは、調査対象者に、よく話す相手を複数(本調査では配偶者を含めて3名)紹介してもらい、その相手にも同時に調査をする方法である。これにより、現実の意見や寛容度、情報接触のデータがネットワーク単位で取得できる。主対象者は高松市の有権者名簿から投票区を単位として二段階無作為抽出法で20〜69歳の700名を抽出した。主回答者に対する調査項目は、政治関連項目(政治関心、イデオロギー、政党支持、政治的有効性感覚、政治参加など)、社会問題に関する争点(夫婦別姓、永住外国人への選挙権など)に関する回答者本人の態度、およびそれらの争点に関する周囲の他者(スノーボール調査の他者票の送付先と同一人物)と世間一般の態度の推測(よく話す人や世間の人はそれぞれどう考えていると思うか)、日頃の情報接触行動(新聞講読、テレビニュース接触、インターネット利用)、人口学的属性(性別、年齢、職業)などである。またスノーボール他者にも政治関連項目や争点態度を尋ね、主回答者の推測がどの程度性格であるかどうかを検証した。スノーボール調査の実施例はまだ少なく、日本の地方都市での調査は社会心理学・社会学・政治学に非常に貴重なものとなると思われる。データは現在分析中であり、この結果は今年7月にメルボルンで行われるアジア社会心理学会、10月に愛知学院大学で行われる日本社会心理学会で発表の予定である。
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