研究概要 |
(1)ある出来事の行為者の顔と周辺人物の記憶に関する発達的検討 幼児がある出来事とその行為者の顔や服装をどの程度結びつけて記憶できるかを検討した従来の実験的研究(杉村:1998,1999)では,行為者の顔の記憶は幼児より成人の方が優れていること,服装の記憶に関しては成人であっても難しいことなどが明らかにされている。本研究では同様のパラダイムを用いて,主要な行為を行っていない周辺人物の行動や顔についてどの程度記憶されているかを検討した。その結果,(1)行為と行為者の顔とを結びつけて記憶することは幼児よりも成人のほうが優れていること,(2)周辺人物の顔の記憶は成人であっても難しいこと,(3)幼児は主要な行為を行っていない周辺人物についてはその存在すら認識しておらず,周辺人物の顔や行動についてはほとんど記憶していないことが明らかになった。 (2)成人が幼少期の社会的出来事を回想する際の誤記憶の検討 生前,就学前,小学校期の社会的出来事(芸能・事件)に関する記憶について,生起時の誤った既知感(生前に起こった出来事に対して,起こった当時のことを憶えていると判断するなど)や,誤った生起時期の認識(生前に起こった出来事を,小学校の時に起こったと判断するなど)がどの程度おきるのかについて検討した。まず,生起時の誤った既知感については,芸能よりも事件の方が誤った既知感をもつ者が多い傾向にあった。次に,生起時期の判断については,小学校期の出来事が一番正答率が高く,生前と就学前の出来事を比較すると,就学前の出来事に対して誤った判断をする割合が高い傾向があった。
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