研究概要 |
目的 清潔感を保つことは、自尊心の側面からも、高齢者の生活の質(QOL;Quality of Life)の維持につながると考えられる。これらの関連性を明らかにするために、本年度は、成人、とくに高齢者が、主観的感情としての清潔感をどのように認識し、その維持のためにどのようなニーズをもつのかを量的・質的に把握することを目的とした。 方法 1.老人保健施設入居女性109名(平均82.3歳、年齢範囲=65〜93歳)を対象とする、化粧および整容に関するききとり調査にもとづき、該当する項目について分析した(伊波・浜,2000)。さらに、その一部を、老人保健施設入居女性における、過去の化粧習慣と美粧へのニーズに関する研究としてまとめた(Inami & Hama,2000)。2.清潔感に関する自由記述調査を、(1)女子大学生156名、(2)看護婦・保健婦99名、(3)40代以上の在宅の成人63名、という3群を対象に行った。 結果および考察 1.高齢女性における化粧のイメージ:筆頭回答について、印象の好悪、無関心と3分類したところ、各群の人数は、それぞれ58・21・16名となった。好印象群では、受けた教育やしつけにもとづく女性観・価値観を反映する回答が多数を占めた。一方、悪印象群には、高コストが理由に挙げられたほか、個人の好みや、年齢を理由とした諦念が反映されていた。また、同一対象者内での複数回答を検討したところ、好印象→悪印象の発言パターンが「年寄りだから、もはや仕方のないこと」というかたちで表現されやすかった(14名)。このような両価的な態度は、加齢に伴う自らの状況の変化への自覚にもとづき、次第に化粧から離れてゆく過程を示唆しているように思われた。2.現在なお、詳細については分析中であるが、不快感情にもとづいて、清潔感について記述する傾向が、いずれの群においても認められた。
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