Greenwald et al.(1998)の開発した暗黙の連合テスト(implicit association test;IAT)を日本語の概念で実施し、そのテストの妥当性を検証した。さらにIATを用いて暗黙の自尊心の個人差を測定し、その概念的、方法論的妥当性を検討した。まず最初に特性概念として「快-不快」、対象概念として「花-虫」、「楽器-武器」を用いたIATを被験者40名(男性24名、女性16名)に実施した。その結果、(1)「快」と「花」および「楽器」を組み合わせた弁別課題(一致課題)の方が「快」と「虫」および「武器」を組み合わせた弁別課題(不一致課題)よりも反応時間が短く;(2)一致課題と不一致課題の反応時間の差異を「花-虫」、「楽器-武器」に対する暗黙の態度の強さを示していると考え、質問紙による両概念おける態度の強さとの相関を調べたところ、0.2程度で低く暗黙の態度の測度の弁別的妥当性が確認された。次に特性概念として「肯定-否定」に対応する一般的な単語および特性語、対象概念として「自己-非自己」を用いたIATを男性被験者35名に実施した。その結果、(3)肯定語と「自己」を組み合わせた弁別課題の方が、否定語と「自己」を組み合わせた弁別課題よりも反応時間が短く、(4)(2)と同様に反応時間の差異を暗黙の自尊心の指標として、質問紙による明示的な自尊心の尺度との相関を調べたところ、一般的単語では相関が低く特性語では相関は中程度であり、弁別的妥当性は一部確認された。
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