暗黙の連合テスト(implicit association test;;IAT)の妥当性に関する研究を昨年に引き続いて行った。性別に対する暗黙の態度を問題とした第一実験では、対象概念として「男性-女性」を取り上げ、その刺激語としては日本人の男性、女性の名前を用いた。また被験者(男性18名;女性20名)には事前に性差別意識に関する質問紙にも回答させた。結果は、男性は「快・男性-不快・女性」の組み合わせた弁別課題の方が、「快・女性-不快・男性」弁別課題よりも反応時間が短く、また女性はその逆の傾向が認められ(ただし交互作用は有意ではない)、自分の性と一致した性別に対する好ましい暗黙の態度が確認された。質問紙評定は、イメージ評定では男女とも女性に対する好意的なイメージを、属性評定では男女とも男性に対する好意的な評定を示しており、IAT指標の結果とは異なっていた。またイメージ評定や属性評定とIAT指標は相関が認められず、事前の性差別意識とも相関がなかった。国に対する暗黙の態度を問題とした第二実験では、対象概念として「日本-アメリカ」、「日本-中国」を取り上げ、その刺激語として、日本人、アメリカ人、中国人の姓名(カタカナで呈示)を用いた(被験者は第一実験と同じ)。結果は、「日本-アメリカ」、「日本-中国」いずれも、「日本」と「快」を組み合わせた課題の方が、「日本」と「不快」を組み合わせた課題よりも反応時間が短く、日本に対する好ましい暗黙の態度が確認された。3つの国に対する質問紙によるイメージ評定では差異はなかったが、形容詞による評定では日本に対する好ましい態度が確認された。しかし質問紙評定とIAT指標の間には相関がなかった。このように想定される方向での暗黙の態度が確認されたことで、IAT指標の妥当性は一部支持されたが、予測的妥当性において、IAT指標と質問紙の指標のいずれが優れているかについては今後のさらなる研究を必要とする。
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