本年度の研究概要は次の通りである。 知的障害児の眼球運動課題遂行において有効な外的援助方法を分析した。左右に交互運動する視標を追視する課題を用いて眼球運動測定を行った。教示の内容を言語的に援助する方法(言語付帯)と身体運動をサインとして援助する方法(運動付帯)とを比較した。これらの付帯条件を実験者が外的におこなう場合と、被験者自らが行う場合との比較も行った。眼球運動の成績は、視標の追視に要した運動数、および視標追視における反応潜時の2つの指標を用いて分析した。眼球運動の測定は眼電位図法(直流増幅)によって行った。 その結果、(1)被験者自らが言語および運動を付帯する場合、運動を付帯させた場合のほうが言語を付帯させた場合よりも課題遂行成績が高いこと、(2)被験者自らが言語および運動を付帯する場合よりも、他者(実験者)が言語および運動を付帯する場合のほうが、課題遂行成績が高いことが明らかとなった。このことについて、(1)被験者みずからが運動および言語を付帯する場合、そもそも求められている課題である眼球運動課題とうまく結びつかず、マルチタスクとなってしまっている可能性があること、(2)他者の働きかけがより効果的であることは、子どもの発達初期において他者の働きかけが先行して重要な意味をもつことと結びついている可能性があることが示唆された。
|