標識化の学習支援効果について、筆者が行ってきた研究から、標識化が基準となる構造形式を明示すること、受け手の構造化方略を支援し構造的理解を質的に高めること、が示されてきた。標識化の学習支援効果が順序構造の理解においても認められたことから、使用説明書の手順理解においても、同様の効果が予想された。そこで、平成12年度に使用説明書の標識化が手順構造の理解におよぼす効果を検討したところ上記の予想を確認したため、平成13年度では、この効果が高齢者にも認められるかどうかを検討した。なぜなら、高齢者の住まいでは手順が一層複雑化し、手順理解の支援が課題になってきたためである。 前期高齢者60名(長谷川式知能検査で21点以上)を30名ごとに2群を構成し、一方を標識有条件、他方を標識無条件とした。住居設備品(「照明器具の取付」)の使用説明書を課題に用い、手順の切れ目を標識化したタイプと、手順をそのまま表現したタイプとを作成した。標識化の有無以外は同一である。手順理解を評価するために、理解テストとして、手順の配列課題、手順の再構成課題等を行った。被験者の遂行を得点化し、条件差を検討した。その結果、標識化が手順理解に効果をおよぼすことが示された。 なお、平成12年度の結果とを併せて総合的に検討したところ、次の結果が導き出された。1)手順理解に標識化効果が認められる。2)また、高齢者は大学生に比べ劣るものの、標識化効果が認められる。3)そこには、特に修正方略が重要な役割を果たしていることが明らかになった(研究成果は、日本心理学会第65回大会ワークショップ「手順の習得と生活環境デザイン」、ならびに、同シンポジウム「説明研究の展開-取扱説明から考える-」において発表された)。
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