昨年までに、島根県東部への実地調査を繰り返して、現代の地方中山間地域の若者たちのショート・ライフコースの質的・量的データを大量に獲得してきた。これはデジタルビデオ映像、スチール写真、会話記録、文書資料、地図など多岐にわたる。 本年度前半は様々な視点からこのデータを分析した。その結果は学歴社会における地方からの人口流出についての、トラッキング理論に基づく新しい研究としてまとめた。その過程において最終的な資料収集と調査のために、島根県東部地域などに繰り返し出張を行なって、対象者のライフヒストリーを精密に作成した。 その後、研究全体をB6判251ページの単著学術刊行物『学歴社会のローカル・トラック-地方からの大学進学』として刊行した(世界思想社2001年9月)。そして教育社会学、地域社会学、エスノグラフィ研究、階層研究の諸分野の国内外の研究者に同書の内容を示しレビューを受けて、今後の研究の方向を探った。さらに同研究をもとにして2001年10月の日本教育社会学会大会で研究報告を行なった。 また、上述の学術的な成果公表と平行して、調査対象者、調査対象地域に対して研究成果をわかり易く報告して社会貢献に努めた。
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