当研究の目的は集合行為が住民及び地域社会に及ぼす影響について分析することである。その集合行為の具体的対象として公民館活動に着目した。公民館活動は社会教育面で重要な役割を果すとともに、地域社会が抱える諸問題(例えば、高齢者福祉の問題や育児問題等)に取組みかつ内部での連帯を維持する側面(さまざまなサークル活動や運動会等の開催等によって住民間の結びつきを強める等)をもつ。当研究では、公民館活動は地域社会を変容させる側面があるとともに、活動に参加した住民の意識を変える可能性があることを仮説としている。その対象地域として山陰地域、特に島根県における公民館活動を中心に調査を進めている。ただし、県庁所在地である松江市でも人口が15万人程度であり、現存するデータに限界がある。そのため山陰地域における公民館活動の特質をより明確化するために、その比較対象地域として福岡市と北九州市を選択して資料収集等を行い、現在分析しつつある。福岡市は政令指定都市の中で公民館活動がもっとも活発な都市の一つであり、活動に関するデータが豊富である。また北九州市は政令指定都市であるが、福岡市と異なり人口が減少傾向にある。これら諸都市の比較により、人口増減別の大都市、地方都市、町村等における公民館活動の特質も明らかになる。平成13年度は、これら諸都市間における公民館活動の比較を進めるとともに、設定した仮説に基づき、公民館活動による地域社会および住民意識の変容過程について、山陰地域における実態をより詳細に調査しその結果をもとに分析・考察を進める予定である。
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